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Print ISSN : 1881-0241
Apoptosis, CD 44は大腸癌の予後因子になりうるか ?
化学療法の有効性を含めた検討
立川 大介有馬 純孝岩下 明徳
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1999 年 5 巻 1 号 p. 82-88

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抄録

癌転移にはリンパ節転移, 血行性転移, 播種性転移の主な3ルートがあるが, 血行性転移の過程は複雑で原発巣からの癌細胞の離脱, 周囲組織への浸潤, 脈管侵入, 接着, 遠隔臓器への移動血管内皮への接着, 浸潤・増殖の経路をとる.この経路のなかでいずれかを阻止できたときに転移抑制が可能になることが考えられる.そこで血流中の癌細胞が遠隔臓器内で定着するためには血管内皮細胞に対する接着能が充進していなければならず, いくつかの細胞接着分子が関与していることが示唆されてきた.そのなかの一つであるCD44は多くのアイソフォームからなりタイプIVコラーゲン, フィプロネクチン, ピアルロン酸などの細胞間基質の蛋白と結合し癌の浸潤転移・造血・リンパ球フォーミングなどの多様な現象に関わっていると報告されている.またApoptosisは個体発生における器官形成などに生理的にみられる現象であるが癌の発生に対しては一種の防御機構になっているものと考えられ近年癌細胞の増殖充進とともにApoptosisからの回避が癌のプログレツションに重要であることが明らかになってきた.
今回筆者らは転移をとりまく微小環境因子の一つとしてCD44とApoptosis との関連と化学療法の有用性を検討する目的で, 癌化学療法におけるTS (thymidylate synthase), TSIR (thymidylate synthase inhibition rate) も併せて検討した.

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