抄録
西南日本に分布する、自生および栽培後放棄状態のタケ・ササ類のタケノコを被食する鱗翅目幼虫を調査した。合計13種のタケ・ササより、合計4026本のタケノコを解剖し、300個体以上の幼虫を採取した。 20℃および15℃で飼育を試みた後に、羽化した成体の形態より種の同定を試みた。モウソウチクからは、1個体の雌が羽化した。ハチクからは、1個体の雌と2個体の雄が羽化した。マダケからは2個体ずつの雌と雄が羽化した。これら全8個体は全て形態的には同一で、ヤガ科のハジマヨトウであった。モウソウチク、ハチクおよびマダケのタケノコからは、ハジマヨトウとは明らかに異なる幼虫はみられなかった。リュウキュウチクからは2個体の雌が羽化した。成体の特徴的な形態からは、未記載種ないしは、ヤガ科のミヤケジマヨトウに近縁の未記載亜種だと思われる。チシマザサからは1個体の雌が羽化し、それはヤガ科のサッポロチャイロヨトウであった。サッポロチャイロヨトウの食樹がチシマザサであることが判明した。この3種のヤガ科の穿孔性幼虫においては、羽化にまで至らなかったどの幼虫段階および蛹にもハチやハエの寄生を示すものはみられなかった。