やどりが
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アカボシゴマダラの幼虫期における光条件と蛹化・羽化・赤紋濃淡の関係(<特集>昆虫少年・少女を育てよう)
長澤 亮石井 学
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2012 年 2012 巻 231 号 p. 30-35

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抄録

研究では蛹化,羽化には体内時計が関係していると考え、明暗周期を変えた場合も蛹化,羽化が正常の時期に行われると仮説を立てた。実験は1〜5齢幼虫を用い、餌の量は一定にし、恒明条件(24L0D・蛍光灯を利用・室温25℃一定),恒暗条件(0L24D・室温25℃一定),屋外《4〜5月》13.5L10.5D・平均気温16.5℃・気温差平均9.5℃,《6〜7月》14.5L9.5D・平均気温25.2℃・気温差平均6.3℃で行った。結果は、どの条件でも通常に蛹化,羽化した。このことから、蛹化,羽化は体内時計によるものであると考えた。一方で、《4〜5月》、《6〜7月》の時期に屋外で飼育していた幼虫には、蛹の期間に違いが確認され、《4〜5月》では約14日,《6〜7月》では約6日であった。なお、越冬して5月に羽化した個体は白化型、7月以降に羽化した成虫は通常型であった。これより、白化型、通常型では、蛹の期間に違いがある事が分かった。また、羽化した個体の赤紋濃淡は多少の色の違いがみられた。そのため、色の違いを主観で分類せず数値化を試みた。これにはまず、所有する80個体の標本について照度一定条件で赤紋のRGB値の解析を行った。解析では、G値やB値とR値の比較、またアカボシゴマダラの幼虫時の生育環境、野外採集個体と赤紋濃淡の変化を比較した。すると、解析した80個体が大きく4グループに分類されることがわかった。さらに、生育環境の違いが赤紋濃淡に影響を及ぼさないことも示唆された。次に、従来は主観に基づいて行っていた赤紋濃淡の分類と、解析結果に基づく分類の比較を行った。これにより、感覚での分類と大きな差がなかったことがわかったが、同時にあいまいな判断を行っていた個体の分類が正確に行えるようになった。今後は、赤紋濃淡を生み出す要因の追求について検証を重ね、判断基準をより正確なものにしていきたい。

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© 2012 日本鱗翅学会
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