1994 年 28 巻 p. 148-134
電気通信技術の革新と通信・放送の業態変化により、プレスと電気通信メディアの差別、周波数の稀少性、放送と通信の境界などに本質変化が生じている。しかし、現行の情報・通信メディアに対する公規制と倫理コードの構成を、(A)自由原則、(B)主体・業務規制、(C)編集方針規制、(D)通信内容・表現規制、(E)広告規制の5分類の下に整理してみると、放送・通信に関しては、(B)(C)(D)の各分野にわたって、広汎で、かつ本来公権力の関与になじまない公規制が存在し、憲法21条の「一切の表現の自由」の保障を空洞化している面が少なくない。それに伴って、メディア自主規制の内容にも、公規制の排除予防のために機能するよりも、公規制の補充補強に働くものが見られる。公規制・自主規制の今後の指向の一つとして、ユーザー・市民のチャンネル利用、リース、発信などの機会を拡大する方向が考えられる。