山口医学
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症例報告
便通異常を契機に発見された胃原発の転移性直腸癌の一例
橋本 真一原田 克則野原 寛章斎藤 由紀檜垣 真吾柳井 秀雄吉田 智治沖田 極
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2004 年 53 巻 3 号 p. 145-151

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抄録

症例は59歳女性. 便柱狭小化および便秘の訴えあり, 3ヶ月で約5kgの体重減少を認めた. 当院における大腸内視鏡検査にて, 直腸に表面平滑な粗大顆粒状病変を認め, 送気を行っても病巣部の拡張は不良であった. 同部の生検組織像では, 粘膜固有層から粘膜下層の脈管周囲に, 印環細胞を伴う低分化な腺癌細胞の集簇がみられたが, 粘膜上皮細胞に異型を認めなかったことより, 転移性直腸癌を疑い全身検索を施行した. 上部消化管内視鏡検査にて4型進行胃癌が診断され, 生検組織像にて直腸病変と同じく印環細胞を認めた. 以上より4型進行胃癌を原発とする転移性直腸癌と診断した. 本症例では, 生検にて転移した癌細胞が検出され確定診断に至ったが, 転移性直腸癌からの生検は腫瘍組織が採取されないことが多いため, 直腸に粗大顆粒状の粘膜を有する狭窄を認めた場合は, 生検組織診が陰性の場合も, 転移性直腸癌の可能性を考慮することが必要と思われた.

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© 2004 山口大学医学会
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