山口医学
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ミニ・レビュー -小西賞受賞者ー
末梢血造血幹細胞動員に関する研究
湯尻 俊昭
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2012 年 61 巻 1+2 号 p. 17-22

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抄録
造血幹細胞に関する研究は組織幹細胞の中で最も進んでいる領域の一つである.特に注目されている造血幹細胞と骨髄微小環境(いわゆるニッチ)との関連は,幹細胞としての自己複製能や多分化能維持に極めて重要であり,造血幹細胞が骨髄から末梢血中へ「動員」させる際に,この両者間でダイナミックな変化が生じている事が明らかにされている.骨髄から動員された末梢血幹細胞は自家移植や同種移植の重要な細胞源として認識され,この幹細胞動員・採取は顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤を使用し,世界中の施設で行われている.しかしながら動員メカニズムには未解明の部分が多く,臨床的に改善の余地が残されている.さらに効率的で安全な末梢血幹細胞動員・採取法の開発につながることを目的として,我々はG-CSF製剤投与による末梢血幹細胞動員時に生じる様々な生体内変化について臨床検体を用いて検討してきた.同種末梢血幹細胞移植のためにG-CSF製剤を投与した健常人ドナーについて骨代謝,脂肪組織,交感神経等に焦点を当て解析を行った.さらに自家末梢血幹細胞採取のタイミングをはかるために,より簡便なCD34+細胞の代替マーカーの検討を行った.
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© 2012 山口大学医学会
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