山口医学
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肝細胞癌に対する内科治療の足跡~革新的治療法の開発
山﨑 隆弘
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2016 年 65 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

原発性肝悪性腫瘍[ほとんどが肝細胞癌(肝癌)]は,本邦の悪性新生物の死亡者数の第5位であり,年間約3万人が死亡している.近年,ウイルス肝炎治療の進歩により,非B非C型肝細胞癌が増加しており,そのサーベイランスが困難な状況である.

 肝癌に対する内科治療は,経皮的局所治療,経カテーテル療法,化学療法などがあり,近年の進歩により予後を改善させてきた.経皮的局所治療は,本邦で1980年代に開発されたエタノール注入療法に端を発し,現在ではラジオ波焼灼療法(RFA)が主流となっている.筆者らはRFAの凝固壊死範囲を拡大させる工夫として肝動脈バルーン閉塞下ラジオ波凝固療法を考案した.経カテーテル療法は,やはり本邦で1970年代に開発された肝動脈塞栓療法(TACE)が中心的役割を担ってきた.近年欧米を中心に施行されている薬物溶出性ビーズ(DEB)を用いたTACE(DEB-TACE)が施行可能となり,今後の評価が期待される.化学療法としては,分子標的治療薬ソラフェニブは世界標準治療であるが,奏功率は2-3%と低い.一方,本邦ならびにアジア地域を中心に行われている肝動注化学療法は,奏功率30-40%である.しかし,その使い分けについてはまだ議論の途上である.筆者らは,抗癌剤抵抗性の高度進行肝癌に対して鉄キレート剤の有用性を示し,最近では経口鉄キレート剤に関しても臨床研究を行っている.

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© 2016 山口大学医学会
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