2016 年 65 巻 4 号 p. 161-166
症例は73歳女性.入院2ヵ月前から咳嗽と体重減少があり,入院3日前に近医にて胸部単純X線写真で右胸水を指摘され,当院に入院となった.胸腔穿刺の結果はリンパ球優位の滲出性胸水であったが,胸水細胞診は3回とも陰性であった.抗酸菌塗抹や結核菌PCRは陰性だが,ADAが50.1IU/Lと高値であり,結核性胸膜炎を疑って抗結核薬の投与を開始した.しかし治療開始後も胸水は減少せず血清の可溶性IL-2受容体が3030IU/Lと高値で,胸部造影CTで右下葉縦隔側に腫瘤様陰影を認めたため,悪性リンパ腫を疑って胸腔鏡下胸膜生検を施行した.壁側胸膜に顆粒状の結節,右下葉臓側胸膜に手拳大の腫瘤を認め,同部位の生検にて,CD20陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断され,PET-CTでは縦隔リンパ節や胸膜に集積を認めたが,他臓器には明らかな集積は無く,胸膜原発と考えた.化学療法としてR-CHOPを施行したところ,胸水や腫瘤は消退し,治療終了後2年以上経過しているが,寛解を維持している.