山口医学
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報告
関門医療センターにおける頸部内頸動脈狭窄症に対するステント留置術の現況
泉原 昭文山下 勝弘
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2017 年 66 巻 2 号 p. 123-128

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抄録

頸部内頸動脈狭窄症(cervical internal carotid artery stenosis:CICAS)に対し,我が国では主に脳神経外科医による外科手術(carotid endarterectomy:CEA)と血管内手術(carotid artery stenting:CAS)が行われている.今回,脳血管内治療実施常勤医が不在である当院におけるCICASに対するCASについて検討した.2002年4月1日から2015年3月31日までの13年間に当院にて脳神経外科治療を受けたCICAS患者82例(男性68例/女性14例・年齢56?89歳/平均72.4歳)を対象とした.症候性(symptomatic:S)/無症候性(asymptomatic:AS)別のCEA/CAS選択回数,CAS選択理由,CAS使用デバイス,両側性CICASと再発性CICASに対する複数回治療状況,CAS/CEA合併症および転帰などを後方視的に調べた.CEA76回(S-CICAS47回/AS-CICAS29回)/CAS16回(S-CICAS9回/AS-CICAS7回)であった.主なCAS選択理由は高位病変と既往疾患各4回であった.主な使用ステントは閉鎖型10回,塞栓保護はフィルター10回であった.両側性CICAS10例(CAS/CAS・CEA/CAS各1例とCEA/CEA8例)と再発性CICAS3例(CEA/CAS1例とCAS・CEA後再治療不要各1例)であった.CASによる脳虚血性合併症が4回認められたが,転帰に影響はなかった.一方,CEAによる脳虚血性合併症が6回認められ,このうち2回で転帰が悪化した.急性腎不全による術後死亡が1回認められた.以上より,施行例はまだかなり少ないものの脳血管内治療実施医が非常勤である脳神経外科施設の当院でもCASの有効性と安全性が示唆され,今後,CEAに対するCASの施行比率はさらに高くなることが予想される.特にその簡便性からマンパワー不足の脳神経外科施設でのCICASに対する脳神経外科治療としてのCASの重要性が高くなると思われる.

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© 2017 山口大学医学会
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