山口医学
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原著
基礎看護技術教育での学生の学びの深まりを促す教育的介入の検討-ポートフォリオの導入-
久野 暢子網木 政江藤澤 怜子
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2017 年 66 巻 3 号 p. 153-161

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抄録

看護を学ぶ学生が基礎看護技術の学びをどのように積み重ねるかは,看護実践能力に大きな影響を及ぼす.基礎看護技術教育で学生の学びの深まりを促すため,自己評価と課題設定,課題到達のための行動を主な課題とし,初めて看護技術を学ぶ学生にポートフォリオを導入した.本研究の目的は,ポートフォリオを用いた学びの特徴を明らかにし,学生の成長につなげる教育的介入への示唆を得ることである.

 研究対象は,A大学の平成26年度看護2年生84名のポートフォリオ記録用紙ならびに無記名自記式質問紙を用いたポートフォリオに対する学生評価である.ポートフォリオ記録用紙は,学生の全記述を精読した後,毎回の授業後に設定する自己課題の内容を質的に分析し,類似した課題を分類して記述数を算出した.また,科目開講直前,2回の中間評価における記述内容の経時的変化をみることで,学生個人の「振り返りのパターン」を導き,学びの特徴を明らかにした.その結果,授業後の課題設定が,第1回中間評価前は「単純な課題」が44.9%,「学ぶ姿勢に関する課題」が51.5%であったのが,評価後は前者が20.8%,後者が75.6%へと変化し,第2回中間評価後もその傾向を維持していた.また,69.0%の学生が「学びが深まる」パターンを示した.将来の自己像へ向けて設定した課題の内容としては,学習行為に関わるものから学習態度や学習者としての自分自身に向けたものなど,幅広い内容が挙がっていた.ポートフォリオに対する学生評価は,大多数の項目で5段階中3.5以上の評価が得られ,学生がポートフォリオを前向きにとらえていることが示唆された.

 以上のことから,今回導入したポートフォリオでは,自己の振り返りと学ぶ姿勢の形成に関する教育的効果が認められたと考える.今後は,さらに活用範囲を検討し,基礎看護技術教育のみならず,他の科目とも連携させていくことが課題である.

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© 2017 山口大学医学会
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