山口医学
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原著
「臨床実習の到達目標」のオンライン自己評価,3年間の動向
久永 拓郎竹内 由利子西本 新桂 春作白澤 文吾
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2023 年 72 巻 2 号 p. 51-62

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抄録

 近年の医学教育では,診療参加型臨床実習等を通じて知識・思考法・技能・態度を学ぶとともに,ラーニング・ポートフォリオとしてその学修履歴を記録し,評価とサポートを受けることが求められている.山口大学医学部医学科では2018年度より,電子シラバスシステムeYUMEを用いて臨床実習中の経験状況を学生が記録する取り組みを開始した.内容は医学教育モデル・コア・カリキュラムを参考に,「臨床実習で医学生として信頼され任される役割(EPA)」,「基本的臨床手技」および「臨床推論」に関する項目とし,学生はポリクリおよびクリクラ期間中の経験を随時eYUME上で入力し,自身の到達度の把握と更なる学修に活用できる.得られたデータは医学教育におけるInstitutional research(IR)活動としても重要な情報であり,学生の経験状況を明らかにするとともに,現在の臨床実習プログラムの課題や改善点を抽出することを目的に本研究を実施した.対象は2020年度~2022年度の6年生とし,3年間で総計365人の入力データを集計した.結果,EPAについては「病歴聴取と身体診察」「診療録の記載」「プレゼンテーション」など基本的な項目で経験機会が得られている一方,「処方の計画」や「緊急性の高い患者の初期対応」,「申し送り」,「多職種のチームで協働」など,発展的な事項で経験機会が少ないことが示された.基本的臨床手技の中には,見学や介助に留まるものが数多くみられた.臨床推論については,症候や疾患により経験状況は様々であり,各診療科における代表的な疾患で経験機会が多い一方,経験機会が得にくい疾患も数多く見られた.本取り組みにより得られたデータを学生・教員にフィードバックすることで,今後も臨床実習の充実化に取り組んでいきたい.

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© 2023 山口大学医学会
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