以上, TMSPを中心にシリルホスファイトの反応を述べたが, シリルホスファイトの特徴は本来安定なホスホネート型の構造を強塩基で反応性の高いホスファイトイオンとして活用する代りに, トリメチルシリル基のhardな性質を利用してこのイオンをトリメチルシリル基で固定したものである。その結果, シリルホスファイトは反応性の高い中性の蒸留可能な物質として単離することができ, さらに反応後簡単に加アルコール分解によってトリメチルシリル基が除去できる利点をもつのでエステル化されていない従来不安定でつくりにくかった種々の有機リン酸化合物の合成にきわめて有用である。