有機合成化学協会誌
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キラルなルイス酸を用いる不斉反応
林 雄二郎奈良坂 紘一
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1990 年 48 巻 4 号 p. 280-291

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抄録

近年, 不斉合成反応の開発には著しいものがあり, 多種にわたる光学活性化合物を高い不斉収率で合成することが可能になっている。なかでも少量の不斉源から大量の光学活性体を得ることができる不斉触媒反応は, 有機合成への有用性の点から注目され, 近年では, 遷移金属均一系触媒を用い, 不斉水素化, ヒドロシリル化, オレフィンの異性化, アルドール反応, そしてカップリング反応などが次々と開発されている。
一方, 酸および塩基触媒は, 有機反応の活性化剤として広く用いられているが, 不斉塩基, 不斉酸触媒を利用する不斉合成反応については, これまで必ずしも十分な研究成果が挙げられていなかった。しかし, ここ数年, この分野で著しい進展がみられている。例えば, Sharplessの不斉エポキシ化反応, ケテンへの不斉付加反応, 相関移動触媒を用いる不斉反応, およびプロリンを触媒とする分子内アルドール反応等がその代表例である。キラルなルイス酸, あるいは塩基を用いる不斉合成反応の開発は, 現在その端緒についた分野であるが, ここではキラルなルイス酸触媒を用いる不斉合成反応の, これまでの研究について述べる。なお, Sharplessの不斉エポキシ化反応は, キラルなチタン触媒をテンプレートとして用いており, 本総説でも取り上げるべきと考えられるが既に優れた総説がいくつか発表されているので, それらを参照して頂きたい。

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