有機合成化学協会誌
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特異な構造を有する含窒素芳香族化合物の合成と機能に関する研究
鹿又 宣弘
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2003 年 61 巻 4 号 p. 352-359

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抄録

含窒素芳香族化合物は窒素原子に特異的な反応性・機能性を有するため, 近年効率的な合成法の開発や生体機能関連物質としての応用などに注目が集まっている.筆者らはビニルイミノホスホランの反応を用いることにより, 特異な構造を有する様々な含窒素芳香族化合物の合成法を開発し, 補酵素機能分子の合成, 高立体選択的不斉還元や位置選択的酸化還元を伴う生体モデル系の構築, あるいは架橋型分子の面不斉制御法の開発に焦点を当てて研究を行ってきた.本稿では, 特にシクロファン型の面不斉を有するキラルな架橋型NADHモデル分子の設計・合成と生体不斉還元モデル反応に関する結果と, これに関連する面不斉分子の立体制御法の開発を中、心に, これまで筆者らが行ってきた研究成果の概要を紹介する.
以上のように筆者らは, ビニルイミノホスホランのユニークな複素環形成反応を用いることにより, 様々な含窒素芳香族化合物の合成法を確立した.また, 架橋ニコチンアミドの面不斉に起因する極めて高度な不斉誘導機能を, 補酵素NADHの生体不斉還元モデル系で実現することができた.さらには全く新しい嫌気性解糖型の酸化還元モデル系を構築し, 新しい生体モデル反応の設計概念と手法を導入した.一方, 面不斉制御法の開発により面不斉機能分子の実質的な不斉合成に成功し, この研究の過程でヒドロキシエチルアミドやN-アシルオキサゾリジノンの効率的・選択的な開裂反応を見出した.特に, キラルな架橋ニコチン酸は様々な面不斉分子の合成素子として興味深く, 有機合成化学へのさらなる応用を今後検討してゆく予定である.

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