Nicon属の多毛類としては既に日本から3種が知られている.しかし,Nicon misakiensis IMAJIMA&HAYASHI,1969は体後部の疣足背足枝に短複剛毛があり,現在ではRuriellineyeis属の1種として扱われている.Nicon moniloceras(HARTMAN,1940)は良く分節した感触鬚を持ち,他種と区別される.本種のタイプ標本の形態には不明な点が多く,Nicon属への帰属も判然とせず,時にPlatynereis属に置かれる.他方,残る本属の既知邦産種、Nicon japonica IMAJIMA,1972は,本研究で記録されたNicon sinicaとは,単一剛毛および偽複剛毛の有無において区別される. 得られた標本には成熟した雌雄および未成熟個体が含まれ,体前部および後部疣足における性成熟に伴う形態変化が記載された.雌に比べて,雄では第5-7節疣足の背触鬚基部が肥大し,また,後部疣足の腹側後足葉が上方へ拡張する.これら雄に見られる特徴は,Sinonereis heteropoda WU and SUN,1979に酷似し,前種に見られる性的な形態変異が別途に記載された可能性があると考えられた.
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