本稿では、戦前から現在に至る膨大な日本中世史学の武士・在地領主研究を武士本拠研究史として整理を試み、①開発、②流通・交流、③宗教・文化、の論点方成果と課題を振り返る。その上で、研究史のなかで武士本拠モデルの把握に重要な研究視角を与えてきた石井進や海津一朗、現時点の到達点である小野正利、斎藤慎一の諸論とモデルを再検証し、既往の武士本拠研究が抱える課題を闡明化させたうえで、筆者のこれまでの研究を踏まえ「本拠論」の射程を提示することを目的とする。既往の本拠モデルは、単位所領内を対象とする本拠空間論と総括できる。ただし、武士・在地領主研究では広範な武士の諸活動が自明視されており、その活動は単位所領内に収まるものではない。本拠が本拠たり得るために、首都京都をはじめ権門都市群や地域社会への有機的回路の構築は必須であり、本拠に必須の社会的機能である。かかる立場から、従来の本拠空間論で措定された本拠を「狭義の本拠」とし、筆者の研究を踏まえながら如上の機能論的に把握される本拠を「広義の本拠」と定義した。この「広義の本拠」は➊ネットワークモデル(単位所領を越えた本拠機能の図化)と、➋レイヤーモデル(立体的・動態的な本拠機能の図化)、さらに➌機能を機能たらしめる言説としての「本拠神話」を持ち、この三要素によって「狭義の本拠」は最終的に存在する。こうした立場を「本拠機能論」とし、武士、在地領主研究への逆照射を試みた。
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