神奈川県立博物館研究報告―人文科学―
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最新号
神奈川県立博物館研究報告-人文科学-
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • ―中世武士本拠論の構築をめざして―
    渡邊 浩貴
    原稿種別: 論文
    2025 年2025 巻52 号 p. 1-30
    発行日: 2025/12/05
    公開日: 2026/04/02
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本稿では、戦前から現在に至る膨大な日本中世史学の武士・在地領主研究を武士本拠研究史として整理を試み、①開発、②流通・交流、③宗教・文化、の論点方成果と課題を振り返る。その上で、研究史のなかで武士本拠モデルの把握に重要な研究視角を与えてきた石井進や海津一朗、現時点の到達点である小野正利、斎藤慎一の諸論とモデルを再検証し、既往の武士本拠研究が抱える課題を闡明化させたうえで、筆者のこれまでの研究を踏まえ「本拠論」の射程を提示することを目的とする。既往の本拠モデルは、単位所領内を対象とする本拠空間論と総括できる。ただし、武士・在地領主研究では広範な武士の諸活動が自明視されており、その活動は単位所領内に収まるものではない。本拠が本拠たり得るために、首都京都をはじめ権門都市群や地域社会への有機的回路の構築は必須であり、本拠に必須の社会的機能である。かかる立場から、従来の本拠空間論で措定された本拠を「狭義の本拠」とし、筆者の研究を踏まえながら如上の機能論的に把握される本拠を「広義の本拠」と定義した。この「広義の本拠」は➊ネットワークモデル(単位所領を越えた本拠機能の図化)と、➋レイヤーモデル(立体的・動態的な本拠機能の図化)、さらに➌機能を機能たらしめる言説としての「本拠神話」を持ち、この三要素によって「狭義の本拠」は最終的に存在する。こうした立場を「本拠機能論」とし、武士、在地領主研究への逆照射を試みた。

  • 樋口 美咲
    原稿種別: 論文
    2025 年2025 巻52 号 p. 31-44
    発行日: 2025/12/05
    公開日: 2026/04/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    大勝金剛は『金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経』を唯一の典拠とする尊格で一面十二臂に表される。おもに敬愛法や息災法等について修される大勝金剛法の本尊である。 本稿で取り上げる神奈川県立歴史博物館の大勝金剛像は、金剛杵と金剛鈴を腹前で執る点に特徴がある図像で、画像作例のなかに類をみない。この特徴的な図像が仁和寺・恵什所伝の図像と一致することに注目し、恵什所伝の図像の由来や相承のようすを事相書類に確認すると、恵什の図像が大勝金剛を十二臂大日とする尊格理解とともに相承されていたことがわかった。恵什の習いは狭義の小野流で相伝されており、なかでも勧修寺流諸師の事相書類にそれを重んじていたようすが認められることは、当館所蔵の大勝金剛像の制作背景を物語っていると考える。

  • 梯 弘人
    原稿種別: 研究ノート
    2025 年2025 巻52 号 p. 45-58
    発行日: 2025/12/05
    公開日: 2026/04/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

     本稿は円覚寺(鎌倉市・臨済宗)塔頭である帰源院に伝来した文書群であり、現在当館に所蔵される帰源院文書をとおして、鎌倉の寺社に残された秀吉朱印状の評価について、寺社の立場から考察したものである。秀吉が遠征先で発給した寺社に対する当知行安堵の朱印状は、九州や関東、奥羽含めて本件のみ確認される稀有な事例である。そのため、先行研究においては、この朱印状発給が鎌倉という地域の特殊性を反映したものとみなされてきた。すなわち、秀吉も当知行安堵の朱印状を発給し鎌倉の寺社を保護することで、自身がその地位に相応しいことを示したと理解されてきた。しかし、検討の結果秀吉朱印状は寺社の要請を契機として作成されたものであった可能性が高いことが分かった。鎌倉で宣言された当知行安堵の約束を確実なものとするため、寺社の関係者が帰京途中の秀吉の許を訪れ、朱印状発給を求めた故に作成されたと考えられるに至った。その後も秀吉朱印状は、寺社の権利擁護のための根拠として活用され、徳川家康が実施した検地に対しても、影響力をもたらしたと思料される。

  • ―幕末期から明治初期にかけて―
    寺西 明子, 菊地 悠介
    原稿種別: 研究ノート
    2025 年2025 巻52 号 p. 59-76
    発行日: 2025/12/05
    公開日: 2026/04/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    江戸近郊農村の有力農民が江戸・明治期に行った多角的な生業内容の一端を武蔵国橘樹郡長尾村の鈴木藤助が残した「鈴木藤助日記」から明らかにする。本稿では特に鈴木藤助家が江戸期から明治初期にかけて営んだ醤油醸造業に焦点をあて、その経営の変遷を「鈴木藤助日記」から整理した。また、関東の中小造醤油家が組織した「山之手造醤油家仲間」の性格についても考察を加え、関東の中小醤油醸造業研究の一事例として鈴木藤助家の造醤油経営を位置づけた。

  • 鈴木 愛乃
    原稿種別: 修復報告
    2025 年2025 巻52 号 p. 77-92
    発行日: 2025/12/05
    公開日: 2026/04/02
    研究報告書・技術報告書 フリー

    当館では令和六年四月から六月にかけて、輸出工芸品コレクターである金子皓彦氏のコレクションから、特に輸出漆器を紹介する特別展「近代輸出漆器のダイナミズム─金子皓彦コレクションの世界─」を開催した。展覧会に際して、芝山象嵌による装飾がほどこされた漆器のうち、パーツの破損等が見られる九点の修復が行われた。本稿では、それぞれの作品の修復箇所と修復方法についてまとめる。技法や材料の傾向や特徴に迫ることで、制作当初の状態について検討を加え、近代輸出漆器の制作の実態を知る一助とする。

  • (前庭部の確認調査)
    佐藤 兼理, 釼持 輝久, 杉山 浩平, 高橋 健, 萩野 はな, 宇根 宏紀
    原稿種別: 調査報告
    2025 年2025 巻52 号 p. 102-93
    発行日: 2025/12/05
    公開日: 2026/04/02
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本報告は、弥生時代の海蝕洞穴の利用実態の解明の準備調査として実施した、神奈川県三浦市間口洞穴前庭部における発掘調査の概報である。洞穴の入口より1m手前に3m×1.5mの調査区を設定し、地表から約2.6mまで掘削を行った。調査の結果、鎌倉時代末~南北朝期初頭に属する合わせ口かわらけ一対と、同時期の土地造成痕跡を検出した。しかし、弥生時代の土層までは到達できなかった。前庭部の土層堆積が予想以上に厚く、弥生時代の層に達するためには、より深い掘削が必要であることが判明した。また、調査目的とは異なるものの、中世の土地開発に関する遺構・遺物が出土した点は洞穴の利用史を考察する上で重要な発見といえる。

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