木材内部を伝播する応力波の速度は水分量の影響を受け変化するため,応力波を用いて生立木の樹幹内水分量の変化を非破壊的に検知できる可能性がある。筆者はスギ(Cryptomeria japonica)生立木の樹幹の長さ約3.0mの通直な特定区間を対象に,長期間の応力波伝播時間(SPT)の計測を行った。その結果,SPTの値が梅雨期に増加し秋期に減少する季節的な変化を毎年繰り返す事を明らかにした。
同じ手法を用いてヒノキ(Chamaecyparis obtusa)生立木の長期観測を行ったところ,スギ同様の季節的な変化が確認された。しかし,ヒノキのピークの出現時期やSPT値の減少の仕方がスギと異なっていた。これはスギとヒノキの年間における生活サイクルの違いに基づく可能性がある。
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