本研究は著者の考案に係る、各種金屬のオレイン酸鹽試藥に依る呈色反應を利用する有機促進劑識別法とは別個に、より簡易にして而も滿足次る新鑑別法を完成せしめん目的の下に遂行せられたるものにして、本報文の研究結果を總括すれば次の如し。
(1) 銅、コバルト、ニッケル、マンガン、鐵、銀及び鉛等の各可溶性鹽類の
N/10溶液を試藥とし、アルデハイドアムモニア系、アルヂハイドアミン系、チオユリア系、グアニヂン系、チアゾール系、チウラム系及びヂチオ酸鹽系に屬する有機促進劑28種のアセトン又は酒精溶液 (0.01~0.05g/10cc)に滴加、反應せしめたるに、大多數の促進劑は夫々特有の呈色乃至沈澱反應を生起するを觀察したるを以て此等を詳細に表記し、斯かる手段も亦有機促進劑の簡便且確實なる檢出法として滿足に採用し得べきを提唱せり。
(2) 名種金屬のオレイン酸鹽試藥の應用に依りては、呈色反應的に鑑識不可能又は甚だ困難なりしテトラメチルチウラム•ヂサルファイド、ラトラメチルチウラム•モノサルファイド、ベンザル•ビスヂメチルヂチオカーバメート、ヂートロフェニル•ヂメチルヂチオカーバメート、ヘキサメチレンテトラミン及びアセタルデハイドアムモニア等の促進劑も、可溶性金屬鹽溶液試藥の應用に依りて適確に識別に役立つべき、夫々特有の呈色反應を生起せしむるに成功せり。
(3) アヒトン溶媒中に於て、ヘキサメチレンテトラミンと可溶性コバルト鹽溶液試藥との間に珍しき新呈色反應の生起するを發見し、これを島田氏反應と命名、本促進劑の特有且鋭敏なる檢出法として推擧せり。
(4) 可溶性銀鹽又は銅鹽溶液を試藥とするチオユリア類促進劑の新呈色反應を發見記載せり。
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