腎兪取穴により犬の針通電麻酔をおこなって, その過程における体温, 心拍数, 呼吸数および心電図の観測記録をおこなった。
1) 体温は通電により徐々に上昇して定電圧維持期に頂点に達し, 通電解除によって次第に回復する一過性の変動がみられた。
2) 心拍数は通電開始とともに増加し, 定電圧維持時にほぼ一定の水準で維持して, 通電解除によって漸減する。
3) 呼吸数は電圧の上昇にともなって急増し, 定電圧維持期に頂点に達して, 通電解除で急速に減少してもとに回復する。また個体により「喘ぎ」呼吸を呈するものがある。
4) 心電図の各波の間隔は通電にともなって短縮し, 通電解除によって次第に回復する。これらの変動は概して調律的な推移をたどる。また各波の振幅は増強される。ただし個体によってはTの二相性変化や逆転が認められた。
総じて針通電麻酔過程におけるこれらは促進的に推移する。この傾向は導入時に顕著となり, 定電圧維持期に定常化を示し, 通電解除によって次第にもとに回復する。このような生体機能の亢進は交感神経系の興奮を示唆している。
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