スポーツ教育学研究
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早期公開論文
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  • 中村 有希, 佐藤 善人
    論文ID: 2415
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/10/22
    ジャーナル フリー 早期公開

    本研究の目的は、体育における小学校教師のリスクマネジメント能力と教職経験の関連性について検討することである。研究手順は2つの段階に分かれている。第一に、体育におけるリスクマネジメント尺度の信頼性と妥当性を検討した。第二に、教職発達区分、研究教科、体育主任経験などの要因が体育のリスクマネジメント能力に与える影響を調査した。小学校教師125名(初任期教師25名、中堅期教師64名、熟練期教師36名)を対象に調査を実施した。本研究から、以下の点が明らかになった。

    1) 探索的因子分析の結果、体育におけるリスクマネジメント尺度は、「教師起因の配慮」、「児童実態の配慮」、「運動様式の配慮」、「教材教具の配慮」の4つの因子で構成されていることが示された。

    2)教職発達区分間では、「児童実態の配慮」及び「運動様式の配慮」の2因子に主効果が見られた。とりわけ、初任期は中堅期・熟練期よりも「児童実態の配慮」に課題を有しており、これまで教師教育研究において指摘されてきた初任教師の課題と同様の傾向が見られた。すなわち、これらのリスクマネジメント能力は、教職経験年数の積み重ねによる一般的な教職経験を通して形成されるものと考えられる。

    3)体育を研究教科とする教師は、他教科を研究教科とする教師よりも「教師起因の配慮」、「児童実態の配慮」、「運動様式の配慮」、「教材教具の配慮」すべての因子でリスクマネジメント能力が高い傾向が見られた。また、体育主任経験の有る教師は、経験の無い教師よりも「教師起因の配慮」、「児童実態の配慮」、「運動様式の配慮」の3因子でリスクマネジメント能力が高い傾向が見られた。しかしながら、交互作用が見られなかった結果も併せると、これらの体育に関連する専門的な教職経験は、リスクマネジメント能力の形成に影響を与える経験ではないと考えられる。むしろ、体育に関連する専門的な教職経験を有する教師や、体育に積極的に関与する教師は初めからリスクマネジメント能力が高い水準にあることから、彼らの個人的要因や特性に目を向ける必要性があるだろう。

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