著者らは,今まで噴流の初期領域におけるエントレイメントの制御を念頭に,速度均一型ノズルから噴出される自由噴流の外側に,薄い環状流れ(二次フィルム流)をつくり,そのフィルム流によるポテンシャルコアの変化などを評価してきた.現在では,2次フィルム流にさらにスピーカによる音響励起を与え,噴流混合の抑制・拡散,双方を目的とした噴流制御を行っている.本稿は周囲と密度差の異なる噴流の剪断層に発生する渦輪の成長・合体・崩壊に着目し,噴流を噴出方向と平行に可視可し,ハイスピードカメラにて撮影した.時系列的な渦輪の挙動から,渦輪の挙動について考察した.図1に主流をCO_2とした場合の,フィルム流のみを可視化し,ハイスピードカメラにて撮影した結果から求めた,フィルム流内側の渦輪の移流速度V_ωを示す.主流V_0=3.15m/s(Re=3,000)に対してフィルム流の流速をv=0〜6.31m/sまで変化させたが,周囲流体とのせん断力が弱く,全体として噴流の拡散は抑制される.特に,流速比VR=v/V_0=0.75のとき,移流速度は主流流速とほぼ等しく,噴流拡散が抑制されていることを示す.音響励起周波数f=220Hzのとき,周囲流体とのせん断層が励起され,外側渦輪が発生し,噴流が拡散し,内部の渦輪の移流速度も遅くなった.図2と3に主流をHeとした場合の渦輪の移流速度V_ωを示す.主流V_0=15.54m/s(Re=1,000)に対してフィルム流を添加すると,周囲流体との強いせん断層によって,フィルム流外側に渦輪が発生し,噴流は拡散する.このときのフィルム流外側の渦輪の移流速度を図2に,内側の渦輪を図3に示す.フィルム流外側の渦輪は,流速比が上がり,フィルム流の流速が速くなると,移流速度が速くなる傾向にある.特に,VR=0.75,f=440Hzのとき,移流速度が最も速くなった.これは,成長した内側の渦輪が外側の渦輪を巻き込むように合体したため,外側の渦輪が加速したことを示している.本実験の上では,唯一外側・内側渦輪の合体した例であり,噴流の拡散をもっとも促進すると考えられる.
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