敗血症においては後期の免疫抑制状態が持続する免疫麻痺が重症化をもたらす主原因と考えられる。要因として、病原体による炎症反応を引き起こすマクロファージが病原体の長期的な感染によってエンドトキシントレランスが生じることが考えられている。しかし、その分子メカニズムに関してはほとんど解明されていない。われわれは、歯周病の重要な起因菌のP. gingivalisがE.coliと比較し独特なサイトカイン発現パターンを示すことを報告した。今回、エンドトキシントレランス機序解明のため、E.coli由来のLPS、P. gingivalis由来のLPSを用い、エンドトキシントレランスが人為的に誘導されるかを評価し、免疫麻痺に及ぼす影響の差異を検討した。E.coli LPS一次刺激により、E.coli LPS, P. gingivalis LPS二次刺激でTNFA遺伝子発現が有意に抑制され、エンドトキシントレランス誘導を確認した。しかし、P. gingivalis LPSで一次刺激を行ったときは、TNFA発現抑制を認めず、E.coli LPSとP. gingivalis LPSでは作用が異なった。E.coli LPSの一次刺激で誘導されたエンドトキシントレランスはE.coliおよびP. gingivalis菌体抗原の二次刺激においても有効であった。一方、P. gingivalis LPS一次刺激後の菌体抗原二次刺激では、炎症性サイトカイン発現は抑制されず、P. gingivalis LPSにエンドトキシントレランス誘導効果がないことを確認した。また、抗炎症性サイトカインのIL10発現が有意に増強した。B. subtillis PGNを二次刺激に使用して検討した結果、P. gingivalis菌体抗原二次刺激のときと同様にE.coli LPS一次刺激ではエンドトキシントレランスが誘導され、P. gingivalis LPS一次刺激では炎症性サイトカインに抑制は見られず、IL10の発現は増強し、P. gingivalisではTLR-1/TLR-2シグナル経路の関与が示唆された。P. gingivalisは今回のエンドトキシントレランス誘導においても、E.coliとは異なりエンドトキシントレランスが生じない興味深い結果であった。
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