本稿の目的は,現代の福祉国家における児童福祉としての社会的養護に着目し,石川県金沢市という具体的な事例の検討を通じて,全国統一的なサービス提供の仕組みと財政移転の構造を明らかにすることにある。
現代の福祉国家においては,児童福祉法に提示される理念に基づいて保護者が児童の養育に対する第一義的な責任を果たせない場合に,市町村をその最前線に位置付けて都道府県や国と連携しながら,その責務を果たすことが求められている。児童が保護者等から虐待などを受けている場合や,離婚や死別などで保護者による養育が行われない場合,児童の非行によって保護する必要がある場合には,市町村と都道府県が連携し社会的養護が提供されることになる。地方公共団体間に財政力格差があるなかで全国統一的な社会的養護が提供されるためには,児童福祉の増進を目的として国が定める「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」に基づいて,施設運営の質を確保しながら提供されている。金沢市という具体的な事例が示すように,児童養護施設などの児童福祉施設を運営するために定められた基準を維持するためには,児童入所施設措置費等国庫負担金などの国から市町村への財政移転が重要な役割を果たしている。今後も財政制約が強まることが予想される中では,社会的養護を含めた包括的な子育て支援ネットワークにおける主体間連携の重要性がより一層増すであろう。
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