一酸化窒素(NO)は肺血管拡張作用を有し,新生児の肺高血圧や成人の心臓血管外科術後に対する吸入療法(以
下,iNO)として用いられている。近年ではHigh Flow Nasal Canula(HFNC) やNon-Invasive Positive Pressure Ventilation
(NPPV)など,非閉鎖回路デバイスとの併用も増え,NO 漏出による人体へのNO
2 曝露が懸念されている。本研究では,成人ICU におけるiNO について,iNO 使用量と室内のNO
2濃度を後ろ向きに解析し,環境および臨床的安全性を評価した。
研究対象は心臓血管外科術後の成人患者17 例(14 名)であった。酸素デバイス,iNO 使用量,NO
2濃度,メトヘモグロビン濃度を記録し,NO
2 濃度は患者周囲3 箇所に設置したモニターでSaltzman 試薬を用いて測定した。その結果,NO
2 濃度はすべて環境省の定める環境基準以下であり,また,iNO 使用量との有意な相関はなかった。メトヘモグロビン濃度は3%と低く,メトヘモグロビン血症に該当した症例はなかった。以上より,非閉鎖回路の酸素デバイス下でも,適切な管理のもとでiNO が安全に実施可能であることが示唆された。
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