陸水物理学会報
Online ISSN : 2758-7231
最新号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • ―多摩川水系浅川と荒川水系市野川の比較からー
    小田 理人 , 小寺 浩二
    p. 1-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    河川の水質は、流下する流域の状況により変化するため、河川水質を調べる際には流域の情報を考慮する必要がある。東京近郊の都市河川では、高度経済成長期に生活排水による汚濁が進行し、各地で問題化した。現在では下水道の整備等により多くの地域で改善したが、一部の地域では現在も課題が残る地域がある。同一規模の流域の水質を、流域特性を考慮に入れながら解析、比較することは、水質の違いの原因を明らかにし、対象流域の課題を見つけることにつながる。本研究では、東京近郊の大河川の支流2 河川(多摩川水系浅川と荒川水系市野川)の流域特性と水質の比較から、両河川の水質の違いが何に起因するものであるのか、また両河川の課題はなんであるかを明らかにすることを目的とする。
  • 乙幡 正喜 , 小寺 浩二
    p. 2-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    新河岸川流域は,かつて水質悪化が顕著な地域であったが,近年は流域下水道や親水事業で水質が改善しつつある。しかし,狭山丘陵に位置する支流の上流部においては依然水質が改善していない地域も存在している。汚染源の特定について2020 年12 月より2 年間調査をした。調査結果に基づき水質を中心とした水環境の特徴を考察する。
  • 山形 えり奈 , 小寺 浩二
    p. 3-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    河川水質の形成には,流域内の気象,土地利用,地形,地質のなどの地理的条件のほか,周辺に生息する生物や人間活動などの要因が複雑に絡み合う。本研究では,山形県を流下する最上川とその支流を対象に,河川水質の形成要因を明らかにする目的のもと,現地調査の結果について考察を行った。
  • 猪狩 彬寛 , 一言 正之
    p. 4-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    第三次人工知能ブーム以降,水域におけるAI 技術の研究・応用・実用化が進み,適用事例は増加の一途を辿っている(Chen et al. 2020, Sit et al. 2020).特に洪水や気象領域での適用事例が多く,国内では河川水位やダム流入量のAI 予測が先行している(一言ほか 2016 等).一方で水環境・水質領域での適用事例は少なく,水文項目に比べて水質項目のデータ数が少ない事が,ネックの一つとして考えられる. 上記状況を踏まえ,荒川貯水池(彩湖)において,既存の水質観測データを用いたAI モデルによるアオコ発生予測を試み,その精度を確認すると共に,学習項目の最適な組合せを検討した.
  • 牛塚 貴博 , 亀田 貴雄 , 吉川 泰弘 , 佐藤 和敏
    p. 5-6
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    近年,雪氷圏での温暖化の指標として湖の結氷日,解氷日,氷厚などが注目されている.北海道釧路市内に位置する春採湖は冬季に結氷し,毎年全面結氷する(牛塚ら,2021)1).春採湖は釧路市の沿岸部に位置し,平均水深1.7 m,最大水深5.8 m,面積0.36 km2 であり,比較的浅く小さい湖である. 春採湖の氷厚の経年変化や今後の将来変化は明ら かになっていない.本研究では湖氷の熱収支モデルを用いた数値計算により春採湖の年最大氷厚を計算し,その経年変化傾向や気象データとの関係を明らかにする.また、将来予測モデルデータを使用し,年最大氷厚の将来変動を明らかにする.
  • -2021 年からのモニタリング結果から-
    西川 結香 , 大八木 英夫
    p. 7-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    とかち鹿追ジオパークは,2013 年12 月16 日に日本ジオパークネットワークとして認定され,北海道・鹿追町全域の貴重な地形と自然環境を保全に務めている。その範囲は,北海道・鹿追町全域で,町の北部は大雪山国立公園に指定され,主なジオサイトのひとつに然別湖があり,観光事業や学習活動の場として活用されている。本ジオパークでは『凍れ』をテーマに掲げており,然別湖の周辺には日本最大級の広さを誇る風穴地帯で日本最古の氷を含む永久凍土が確認されことなど自然的特徴がある。また,完全結氷することがこの地域にとって観光資源であり,結氷現象への理解および予測は必須である。しかしながら,2023 年,全世界的に統計開始以降,夏季の平均気温が最高となるなど,温暖化の進行により結氷しなくなることが懸念されている。本湖では,2021 年10 月より水温のモニタリング観測が開始され,主に然別湖の最深地点における水温の季節変化について議論する。
  • 松岡 弘斗 , 大八木 英夫
    p. 8-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    北海道・然別湖は,冬季に水が凍る結氷湖である。12 月下旬~翌年3 月下旬は,本湖の結氷期間であり,湖上に氷と雪を使った建物(しかりべつ湖コタン)が作られ,結氷する湖沼を観光資源として活用されている。しかし,近年の気候変動の影響により,世界的に湖の結氷期間の短期化や不凍湖化が報告されている。例えば,アメリカ海洋大気庁(NOAA)は,2023 年2 月13 日,世界的大湖沼であるアメリカの五大湖のうち氷に覆われている結氷面積の割合はわずか7 %で,この時期に予想される35~40 %を大きく下回り、この時期としては過去最小であるとの観測結果を報告している。このように,気候変動の影響は,氷と雪を観光資源としている然別湖への影響が強いことが予測され,結氷日との関係は重要な関係である。そこで本研究は,然別湖の水温観測とともに気温および結氷期間について議論する。
  • 濱 侃 , 黒上 京太郎 , 松岡 延浩
    p. 9-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    エジプト・ナイル川の西に広がる砂漠地帯は西方砂漠と呼ばれ,エジプト国土の約90%を占める。西方砂漠には,いくつかの大きなオアシスが点在し,オアシスは降水量がほとんどないため地下水に依存した生活が営まれている。ニューバレー県に位置するハルガオアシス( 24°35′N to 26°00′N ,30°47′E to 30°83′E)は,西方砂漠最大のオアシスで南北方向に広がっており,その長さは100kmを超える。オアシスの水資源はヌビア砂岩帯水層からの掘削井戸および湧水である。地下水賦存量などの実態は不明であるが,新たな涵養のない地下水を利用していると考えられる。ハルガオアシスから西に150km 離れたダハラオアシスもヌビア砂岩帯水層の水を利用しており,ここでは顕著な地下水位低下が報告されている。
  • 大八木 英夫 , 知北 和久 , 澤田 結基 , 金森 晶作
    p. 10-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    気候変動の影響を最も強く受ける水環境は,水温と凍結現象とされている。然別湖では,冬季に湖上に雪と氷を使った建物が造られ,湖の結氷を観光資源にしている地域でもある。また,とかち鹿追ジオパークの域内であり,然別湖の周辺には,夏でも溶けない氷を含む永久凍土など,寒冷な地に特徴付けられる自然環境が構成要素となっている。ジオパー クのサイト内では,保全すべきものを定点観測対象とすることが重要であり,それが地域資源の保護につながる。特に,凍結現象が観光資源になっている然別湖の水温環境の解明は急務であり,2021 年10月より水温モニタリングを開始した。本発表では,結氷中における水温環境について議論する。
  • -2023 年の結果と2024 年の予測-
    亀田 貴雄
    p. 11-12
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    亀田ら(2022a)1) は1974 年から2021 年までの48年間での摩周湖の結氷観測データを用いて,摩周湖の結氷と気象条件との関係を明らかにした。この中で,摩周湖は閉鎖系の湖のため冬期の結氷に夏期の気温が影響しており,それを用いると前年9 月1 日に翌年の摩周湖が全面結氷になるか部分結氷になるかが予測できることを報告した。また,昨年の陸水物理学会で亀田ら(2022b)2) は1974 年から2022 年までの49 年間での摩周湖の結氷と気象条件との関係を報告し,2023 年の全面結氷日は2 月21 日±12.3日(2 月8 日~3 月6 日)と予測できることを報告した。 今回は2023 年の摩周湖の実際の結氷状況と2024年の結氷予測を説明する。なお,年は寒候年(1 月以降の年)で示す。
  • 亀田 貴雄 , 蜂谷 衛 , 牛塚 貴博
    p. 13-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    屈斜路湖では本発表の第2 著者の蜂谷により,1984 年冬期から結氷観測が実施され,2023 年冬期までの40 年間の全面結氷日が記録されている.本研究ではこのデータを用いて,1)屈斜路湖の全面結氷がどのような気象条件で起こるのか,2)全面結氷日の将来予測,を明らかにすることを目的とする.観測は屈斜路湖を見下ろす美幌峠,藻琴山展望 駐車公園および屈斜路湖に接する国道243 号線,道道52 号線から目視および双眼鏡を用いて実施した. なお,以下の記述での年は寒候年(1 月以降の年)で示す.
  • 画像のRAW ファイル使用の試み
    花石 竜治 , 知北 和久
    p. 14-15
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    光学的に純水に近く青色を呈するwater body の呈色機構については,演者ほかの研究以前は,水の分子散乱によるものと定性的に理解されてきた。演者ほかは,それまで湖水の「青さ」の原因が未解明であった青森県・青池(あおいけ)の呈色機構研究を2016 年から行ってきた。演者ほかの呈色計算法は,散乱の一次近似のもとで光線逆方向追跡法により各呈色機構(湖底乱反射,水の分子散乱および懸濁物質のミー散乱)による湖面各点の呈色を高速に算出する。
  • -序報-
    後藤 章夫 , 知北 和久 , 岡田 純 , 大八木 英夫 , 齋藤 圭
    p. 16-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    仙台市の北北西約54 km にある鳴子火山は,直径約 7km の不鮮明な輪郭をもつカルデラとその中央部の溶岩ドーム群からなる。この火山活動として,過去1 万年間に5 回の噴火(いずれも溶岩ドーム中央部の潟沼付近と推定)があったとされる。本研究では,先行研究との比較から,これまでに分かった潟沼の熱的構造の変化について議論する。
  • - 噴火前2013 年から2023 年まで10 年間の観測を踏まえて‐
    小寺 浩二 , 浅見 和希 , 猪狩 彬寛 , 小田 理人
    p. 17-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    長野県と岐阜県の境に位置する御嶽山が, 2014 年9月27 日に水蒸気爆発により噴火した。発生した火山噴出物は山頂付近の湖沼や周辺河川に入り込んで, 水環境への大きな影響があった。高山湖沼研究として噴火前に現地調査を行い平常時の水質を把握していた法政大学水文地理学研究室では, その後約10 年間にわたって継続調査を行ってきた。今回は, その結果を改めて整理し,噴火前後の水質変化を明確に示したい。
  • 江端 一徳 , 松本 嘉孝 , 宇佐見 亜希子 , 谷口 智雅
    p. 18-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    2014 年に噴火が発生した御嶽山南麓には王滝川が流下しており,その下流には,中京圏の工業用水や農業用水などの水源となっている牧尾ダムがある.火山噴火口周辺は火山ガスや硫黄酸化物が堆積しており,王滝川左岸の支川の一つに,その火口が存在する谷を源流にもつ濁川は硫酸酸性を呈している.そのため,濁川が王滝川本川に合流すると水質が大きく変化することが分かっている1).一方で,右岸側は,火山噴火の影響を受けていない河川が存在し,それら複数の支川が流れ込み王滝川を形成している.さらに,両岸の支川堰堤では,水力発電用の取水が行われており,その取水量の大小が王滝川本川に流れ込む水量や水質へ影響を及ぼしている2).そこで,本研究では,火山域に特徴的な硫酸イオンに着目し,王滝川本川での取水量の有無を考慮した硫酸イオン流出負荷量を算出することを目的に調査を行った.
  • 谷口 智雅
    p. 19-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    2014 年9 月27 日に噴火した御嶽山を対象に、噴火が陸水に与えた影響、火山地域における陸水環境の生態的・化学的な調査・研究を行っているが、地域の水循環や水収支の把握には、自然的な水の流れだけでなく人工的な移動や水利用を含めて理解することが重要である。さらに、物質収支の観点から河川流量の把握は不可欠である。このため、現地での流量観測と合わせて、公的な機関などの水位観測による流量データや水道取水量などの統計資料なども利用して、地域の水移動や水環境の把握を行っている。しかし、水位観測に基づく流量や水利用による計画取水量などの数値は現況と異なる場合もある。このため、現地調査による観測流量データと水利用施設の取水量の比較検討を行った。
  • 森本 洋一 , 小寺 浩二
    p. 20-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    日本海に流入する河川は多雪地域を流れるため,春先から初夏にかけて,融雪水の影響を受けた特徴的な水質がみられる。さらに,新潟県のような温暖積雪地域を流れる河川は,積雪期間中においても融雪の影響がみられるなどの理由で,水質の変動が大きいと考えられる。そこで筆者らは,谷川岳を源流に持つ魚野川流域において,積雪期や融雪期における水質の特徴や変動,及びそれらの要因を明らかにするために,主に2009 年から2011年にかけて河川水質調査及び積雪調査を行ってきた。本稿では,2009 年12 月から2010 年3 月の調査結果に基づき,流域の河川水質の変動とその要因について考察した結果を報告する。
  • 鈴木 啓助
    p. 21-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    標高が低い気象官署の年平均気温とそこの緯度との間には、明瞭な直線関係が認められる。しかしながら、標高が高い気象官署の年平均気温とそこの緯度は、この直線関係から外れる。これらの標高が高い気象官署について、冬季の気候変動を検討した既報(Suzuki, 2011)では、必ずしもすべての地点で年最低気温が上昇傾向を示したり、降積雪深が減少傾向にあるわけではないことがわかった。また、諏訪湖では御神渡りが現れない「明けの海」が2023 年冬までの5 季にわたり続いた。さらに、「近頃の冬は寒い日が少なくなった」との声をよく聞く。一方で、信州大学鈴木研究室による高標高の13 地点での気象観測結果から、2003 年から2017 年までの15 年間では、一部の観測地点では年平均気温の低下傾向が確認されるが、年平均気温の上昇傾向は認められないと報告されている。さらに、中部 山岳地域のアメダス観測地点のうち、1000 m を超える標高での8 地点でも、2003 年から2017 年の間では年平均気温の変動傾向は統計的に有意ではないと報告されている(鈴木・佐々木,2019)。前述の既報から10 年以上が経過していること、さらに、諏訪湖の「明けの海」が続いていることから、中部山岳地域の冬は暖かくなっているのか否かを検討する。
  • 鈴木 啓明 , 中津川 誠 , 石山 信雄
    p. 22-23
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    気候変動に伴い,積雪寒冷地では冷水性種の生息適地の縮小など,水温上昇による河川生態系への影響が懸念される.河川水温を左右する要因の一つに,地下水の流入の程度が挙げられる.Ishiyama et al. 1) は一般に地下水の流入が多いとされる日本の火山岩分布域で,夏期の平均水温が相対的に低く保たれることを報告し,過去の夏期水温と気象要素の関係をもとに,流域地質に応じた将来の河川水温を予測した.一方,流域地質に応じた河川水温を,プロセスベースのモデルで推定する手法はなかった.そこで著者らは熱収支及び流域水収支を考慮した,流域の地質の違いを反映した水温推定モデルを開発し,河川水温の将来変化を予測した2).本研究では既往研究2)より長期間を対象により多くの流域で河川流量と水温の再現及び水温の将来予測を行い,その特性を解析した.
  • 小野寺 真一 , 齋藤 光代 , 王 崑陽 , Rahman,MS, 細野 高啓 , 梅澤 有 , Ridwansyah,I, Rus ...
    p. 24-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    流域から沿岸への物質輸送は人間活動(都市化や農業)の影響により世界規模で増大しており、その定量化は海洋環境の保全、生物生産の確保や炭素固定などの点で重要であり、SDGs の達成において必須である。SWAT モデルは流域規模で栄養塩流出を予測する上で有益なモデルであり、特に土地利用や気象・流量情報があれば、長期的に復元が可能であり、大阪湾では水質情報のない1950 年ころまで栄養塩流出が復元され(Wang et al.2022)、その汚染強度が明らかになってきた。一方、海底の堆積物情報も年代とともに計測することで流域環境(汚染強度)の復元に活用されてきたが、保存性の良い重金属に限られていた(Hosono et al.2010)。 本発表では、長期の栄養塩流出を復元し都市化の影響を明らかにすることを目的とし、現在実施中のAPN Global P(2019-2024;PI 小野寺)、科研国際B(インドネシア2021-2024;代表小野寺)などの大阪湾流域、インドネシアジャカルタ湾流域における成果を紹介したい。
  • 花田 心吾 , 小寺 浩二
    p. 25-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    遠賀川流域は北九州都市圏の主な水源としての重要な役割を果たしている。しかし,流域人口約60 万人以上が居住しているにも関わらず低い下水道整備率や河口堰による水の滞留など水質への影響が懸念される。本研究では,現地での河川の水のサンプル採取とそれらの水質解析を通じ,流域の水環境の特性を明らかにする。現地測定項目の季節的,空間的考察により夏期にpH の値が下がるなどの特性が明らかになっているが,今回は主要溶存成分も交えて考察する。
  • 齋藤 光代 , Nguyen Hong Nhat, 小野寺 真一 , 秋永 拓弥
    p. 26-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    海底湧水(Submarine Groundwater Discharge:SGD)は海底部を介した地下水の流出と定義され、地球上の水・物質循環において重要な役割を果たしていると考えられている。特に、地下水は地表水よりも高濃度の溶存成分を含む傾向にあることから、沿岸域の栄養塩(窒素、リン、ケイ素)や炭素の循環、沿岸生態系に及ぼす影響が指摘されている。沿岸生態系の中でも特に、海草や海藻類の群落である藻場は、陸域の森林にも匹敵する炭素固定能を有するとして、近年「ブルーカーボン」と呼ばれ、地球温暖化や海洋酸性化の緩和機能が注目されている。また、藻場は沿岸域の海底に形成されるため、SGD の影響を直接的に受けやすいと考えられる。一方で、その分布や生育環境に及ぼすSGD の影響は十分明らかにされていない。そのため本研究では、藻場が分布する瀬戸内海の島嶼沿岸域を対象に、ラドン(222Rn)および溶存態ケイ素(DSi)収支に基づきSGD の空間分布を評価することを目的とした。
  • 堀内 雅生
    p. 27-
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2024/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    夏季を中心として山地の斜面より冷風を吹き出す場所を,風穴と呼ぶ。風穴の活用は,主に明治時代以降,蚕種の保存施設や果実の冷蔵庫として活用されていた。近年は電気冷蔵庫普及によって,使用事例は少なくなった。しかし,現代でも,観光スポットとしての活用や,災害等による停電の際も継続して研究用の蚕種を冷蔵保存できるよう,風穴をバックアップ冷蔵庫として活用している事例もある。 また,風穴は上記のような人間による利活用以外にも生態系維持の面で重要な役割を果たしている.風穴に面した空間の気温や地温は低温に維持されており,低温環境に適応した動植物の隔離分布地として機能している(Růžička et al. 2012). 風穴は,周辺の気温等をはじめとする気候条件によって温度が左右される可能性があり,その場合は温暖化等の影響による風穴温度変化が生じることも考えられる。そこで,複数の風穴にて観測を行い,周辺気候条件と風穴温度の関係を整理することが,まず重要であると考えられる。 筆者は四国地方の温暖な気候条件下における風穴温度観測を継続しているが,2020 年度に新潟県津南町で風穴観測を行う機会があり観測を実施,幅広い気候条件下での風穴観測事例の拡充を行った。
feedback
Top