室内環境学会誌
Online ISSN : 2186-4314
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  • 倪 悦勇, 熊谷 一清, 吉永 淳, 吉野 博, 篠原 直秀, 柳沢 幸雄
    2007 年 9 巻 3 号 p. 61-73
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,中国における揮発性有機化合物(VOCs)とカルボニル化合物の個人曝露量を把握し,また室内環境の個人曝露量への影響を明らかにすることを目的として,中国の3都市において計40軒の住宅(成都30軒,北京5軒,長沙5軒)を対象に,VOCsとカルボニル化合物の室内濃度,屋外濃度,個人曝露量を調査した。その結果,ベンゼン,トルエン,キシレン,ホルムアルデヒドの室内濃度屋外濃度のいずれも,既往の研究で報告されている他の先進国の都市より高かった。VOCs及びカルボニル化合物の個人曝露量と室内濃度の間には強い相関がみられた。ほとんどのVOCsとカルボニル化合物のI/O比(室内濃度/屋外濃度)は1以上であった。また,成都市のデータを用いて住宅及び生活にかかわる因子(内装のグレード,内装後の経過時間,床内装,壁内装,単位床面積あたり家具数家具の平均使用年数,窓開け換気時間,喫煙など)とVOCs室内濃度,個人曝露量の関連性を検討した。その結果,内装の経過時間,内装のグレード,内装の材質,家具の平均使用年数が,調査した中国住宅の室内環境中のVOCsとカルボニル化合物濃度に有意に影響していたことがわかった。また,個人曝露量を用いてベンゼンとホルムアルデヒドの吸入曝露による生涯発がんリスクを試算したところ,いずれも10-4オーダーの高いレベルであった,中国都市住宅において居住環境中ベンゼンとホルムアルデヒドの曝露による発ガンリスクの問題は早急に解決すべき課題である。
  • 篠原 直秀, 梶原 智寿, 落合 聖史, 藤井 実, 小林 拓夫, 内 富男, 柳沢 幸雄
    2007 年 9 巻 3 号 p. 75-81
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    居住環境において、短時間で簡易かつ精確にホルムアルデヒド放散量を測定する測定器(Passive EmissionColorimetric Sensor:PECS)及び反射分光光度法を適用した専用の反射光計を開発した。PECSは、外径23mm、厚さ3.2mmであり、PET樹脂、保水紙、ホルムアルデヒドと酵素反応を起こして発色する試験紙から構成されている。純水を1滴PECSに滴下した後、放散源表面に貼り付けると、放散源から放散されたホルムアルデヒドがPECS中を拡散して試験紙上に到達し反応・発色を起こし、30分間の暴露で安定した結果が得られる。その発色強度を目視もしくは反射光計により測定することによって、放散量が現場で測定できる。PECSの発色に対する反射光計(照射光は青色及び緑色)の応答値と水溶液濃度の相関は、0.4~20μg/mLの範囲で非常に直線性が良かった(R2>0.99)。PECSとデシケーター法の測定結果は、非線形の相関(青色LED:y=0.225x0.444,R2=0.995,緑色LED:y=0.233x0.529,R2=0.992)を示した。この傾向は再現性があったため、この相関式を用いることによって、PECSの測定結果をデシケーター法により得られる放散量試験結果に変換できる。測定精度(N=7)は4.3%~13%であった。また、定量下限値はデシケーター値で0.0593mg/Lであり、F☆☆☆☆の建材からの放散量(0.3mg/L以下)を十分に測定できることが確認された。
  • 吉田 俊明, 松永 一朗, 織田 肇, 三宅 吉博, 佐々木 敏, 大矢 幸弘, 宮本 正一, 廣田 良夫
    2007 年 9 巻 3 号 p. 83-95
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    大阪府内に立地し建築(改築,改装を含む)後半年以上経過した105軒の住宅を対象として化学物質による室内空気汚染の実態を調査した。調査期間は2003年6月~2004年1月であり,各住宅における化学物質の捕集は,普段の生活環境下において24時間行った。捕集された二酸化窒素及びホルムアルデヒドは比色法,揮発性有機i化合物(VOC)38種及び準揮発性有機化合物(SVOC)39種はGC/MSにより定量した。二酸化窒素(中央値:35μg/m3),ホルムアルデヒド(31μg/m3),トルエン(22μg/m3),酢酸エチル(12μg/m3)の濃度レベルが比較的高く,高濃度のα-ピネン(最高値:1800μg/m3),p-ジクロロベンゼン(1770μg/m3)が検出された住宅もあった。室内濃度が厚労省指針値を超過した物質はp-ジクロロベンゼン(10%)のみであった。ホルムアルデヒド及び二酸化窒素濃度は冬季に高かった。SVO Cのなかではフタル酸ジ-n-ブチル及びフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)等の室内濃度レベルが高く,多くのフタル酸及びリン酸エステル類の室内濃度は冬季よりも夏季において高かった。共力剤S-421の室内空気中からの検出頻度は高く,9割の住宅より検出された。これまでに室内空気汚染物質として報告例のないメトキサジアゾンを含む13種の殺菌剤・殺虫剤が室内空気中より検出された
  • 原 邦夫, 森 美穂子, 石竹 達也, 原田 幸一, 魏 長年, 大森 昭子, 上田 厚
    2007 年 9 巻 3 号 p. 97-103
    発行日: 2007/03/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    2002年2月に校舎の改装工事の終わった小学校の教室にただちに入室した小学生女子が化学物質過敏症を呈した。転校後に症状が改善したため,教室内空気質が主な原因とみられた。本研究の目的は,ホルムアルデヒドおよびVOCs濃度の経時変化の特性を明らかにし,学校の改装についての改善策を示すことである。
    我々は対象の校舎改装後小学校の教室内のホルムアルデヒドおよびVOCsの気中濃度を2002年の3月から2か月ごとに2年間測定した。アルデヒドは2,4-DNPH捕集-HPLC法,7VOCs成分(日本の厚生労働省が規制している11成分の内のトルエン,エチルベンゼン,キシレン,スチレン,p-ジクロロベンゼン,テトラデカンおよびフタル酸-n-ブチル)はTenaxTA捕集-加熱脱着-GC/MS法を用いた。総VOCs濃度はトルエン濃度換算して求めた。対象の教室の総VOCs濃度は,外気の濃度の数倍であり,教室内にVOCsの発生源があったことを示唆した。また,2年間の結果は物理化学的な性質に応じてホルムアルデヒドおよびVOCs濃度の経時変化は3様に分かれることを示した。すなわち,(1)1年目の夏に最高濃度を示し急激に減衰した物質として,トルエン,エチルベンゼン,キシレン,スチレン,(2)2年目の夏にのみ高濃度を示した物質として,ρ-ジクロロベンゼン,(3)夏に1年目および2年目ともに高濃度を示す二峰性の濃度変化を示した物質として,ホルムアルデヒド,テトラデカン,フタル酸ジ-n-ブチル,に分類された。これらの結果は,塗料に含まれるトルエン,エチルベンゼン,キシレン,スチレンは最初の夏で急速に揮発し,家具や内装材に含まれるホルムアルデヒドおよびフタル酸ブチルは低濃度ではあるが高温多湿の夏に毎年揮発することを示した。以上のことから,我々は学校での改装工事は少なくとも休みの前半に行い,とくに暑い夏に揮発させることを推薦した。
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