局所とは代数体の完備化の意味で局所ゼータ関数は複素数値をとるものである.本稿では
p進体の井草ゼータ関数を主として説明する.この場合に話を限らない理由はすべての完備化を考える事が研究を進めて行く上に大切な為である.上の意味の局所ゼータ関数は多項式,局所体, Haar測度と言った数学の基本概念を使って極めて自然に定義されるものであるが,特に
p進体の場合の最近の発展が示す様に,結果は古くから知られていた事実の拡張ではなく全く新しいものである.そして研究の目標は‘高次形式の数学’の一分野の開拓にある.詳細は本文に譲りその一端を説明しよう.
一番簡単な井草ゼータ関数は
p進体を
K,その整数環を
OKとしたとき
OKに係数を持つ
n変数の多項式
f(
x)に対し
O_??_の全測度が1となる
KnのHaar測度
dxを使って
Z(
s)=_??_|ƒ(
x)|_??_
dx, Re(
s)>0
で定義される複素変数
sの関数である.その理論の始まりを
Z(
s)が
t=
q-s,但し
qは
OKの剰余体の元の個数,の有理係数の有理式となると言う基本定理が[13]で証明されBorewicz-Šafarevicの予想が解かれた時点にとればそれから丁度20年になる.明らかに
Z(
s)の主要問題はこの有理式の性質を調べ,できればその分母及び分子を正確に記述する事である.
Z(
s)の性質については
f(
x)が斉次で良い還元を持っている場合に新しい関数等式が実験的に発見された.そしてこの予想された
Z(
s)の関数等式はDenef, Meuser [8]により
Fq上のWeilゼータ関数の関数等式,それも只一つの
Z(
s)に対し無数の多様体に対応するもの,を使って証明された.この新しい型の関数等式は連結既約で
GL1・1
nを含む
K上分裂している
GLnの代数的部分群
Gのゼータ関数に対しても成立つ事が[21]で示された.そしてその系として
p進Hecke級数の変数の有理式としての次数が
Gの交換子群
D(
G)の中心の位数の符号を変えたものに等しい事が導かれた.この事実は佐武が
p進球関数の理論を展開した頃は
G=
GSp2lの場合でも予想であった.
Z(
s)の分母については
f(
x)のBernstein多項式
bf(
s),または佐藤の概均質ベク卜ル空間論の用語を使って単に
b関数,が重要になってくる.例えば
Z(
s)の
k位の極の実部は
bf(
s)の少くとも
k位の零点ではないかと言う予想がある.この予想は
K=
R,
Cの場合の複素巾に関する定理と
p進体の場合の非常に多くの例によって支持されている.そして特別な場合にLoeser [29], [30],既約正則な概均質ベク卜ル空間の相対不等式の場合に木村,佐藤(文広), Zhu [28]によって位数に関する部分を除いて証明された.然し一般の場合は未解決である.また
Z(
s)の分子に関しては,概均質の場合の例が示す様に,ある型の
tの3次式が全く類似性のない
f(
x)に対する
Z(
s)に現れると言った不思議な現象が知られている.とにかくこの理論はまだ新しく多くの予想や問題がある.
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