1.1957年から1963年の間,東京都渋谷区常磐松旧東宮仮御所において,皇太子殿下の設置せられた二種のムクドリ用集団巣箱の利用成績を記録させていただいた。
2.四面集団巣箱(一面5巣房)では3番までは正常蕃殖したが,通常一面を一番が占領して上巣房で蕃殖し下巣房にも営巣することが多く,この労力のため卵期がおくれたり,巣材の入れかえなどに終始し或は1~2卵を放卵するに止まった例や1腹を二巣に分産して抱卵度不足で孵化しなかった場合などがあった。
3.横列集団巣箱(横列に30個で入口は交互)でも,殆んどすべての巣房に営巣するが,同様に放卵とか分産の例をみた。
4.この式では左右の端の方の巣房を多く利用し中央部はなわばりの拡張の意味の営巣に止った。
5.一般に雛の巣立ちの後で営巣欲が再発し同一巣又は隣接巣房に営巣が進んだ。しかし二回目産卵例は少なかった。
6.色別では白(恐らく端という位置効果も加わり)がよく黄,赤,生木など区別し難かったが,緑は成績がよくなかった。
以上の如く,これらの集団巣箱も好んで利用するが,巣なわばりの習性のあることから余分な巣房の占領営巣や分産など有効でない点が認められた。しかしこれらを考慮すれば集団的に調査できる利点を生かすことができると思われる。
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