1.はじめに 日高ヒスイ(透輝石)は番場猛夫が1972年に鉱山地質学会誌(現,資源地質学会誌)で発表し,1980年には宝石学会誌でも紹介され,世界的に有名になった日本産宝石の一つである.同種の透輝石を,現場近くの転石で観察する機会を得たので,他の産地の透輝石と比較して報告する.
2.産状について 北海道日高町千栄(Chisaka)産の日高ヒスイは,蛇紋岩とロジン岩の間に挟在する産状で見られる.鉱物種としては,新潟県糸魚川などで見られるひすい輝石(Jadeite:NaAlSi
20
6)ではなく,透輝石(Diopside:CaMgSi
20
6)である.
一方,様似郡様似町幌満(Horoman)等の橄欖岩に含まれる緑色∼濃緑色透輝石も含有するクロムで着色されたものである.これも日高ヒスイと呼んでもよいのではないだろうか.
3流通について 日高山脈博物館
で日高ヒスイを観察できるが,現地で緑色透輝石は確認できなかった(2014年9月20日調).また,市場ではほとんど見られない.これらの緑色透輝石の着色原因はいずれもクロムの含有によるものであり,綺麗な緑色を呈する魅力的な宝石として,今後は流通する可能性がある.
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