4シーン(1980年9月,1986年8月,1992年9月および2000年8月観測)のランドサット衛星のデータを利用して,世界遺産地域を含む白神山地の森林変化を1980年から2000年までの3期間に分けて解析した。観測時期が隣り合うデータの,赤のチャンネルを1セットとして,経年変化の小さい落葉広葉樹林について相関行列を求めた。この相関行列に基づいて主成分分析を施して,得られた第2主成分を閾値処理によって伐採や下刈りなどのバイオマス「減少」と,成長などのバイオマス「増加」のエリアに分けてマッピングした。世界遺産地域の境界から12km以内の森林について1986年以前と比較すると,年間の「減少」面積は1986年以降に約6割に減った。「減少」面積は1986年以前では遺産地域境界からの距離に依存していなかったが,1986年以降では5km以上の距離階に対して3km以下の距離階では「減少」面積は2〜3割程度まで減った。1986年の赤石川流域でのブナ林伐採の凍結に始まり,ブナ林伐採が抑制されていった状況が解析結果に表れた。
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