本研究では,江戸時代における紀州藩内の事績がまとめられた『南紀徳川史』に着目した.そのなかから,社会基盤整備に関する記述を抜き出したところ,45事項が該当した.そして,社会基盤整備の対象ごとに整理したところ,15項目に分類することができた.その結果,新田開発に関する記載が最も多いことが明らかとなった.それに付随して用水路の新規開削に関する項目も多く,その他に溜池の築堤や修繕に関するものなど,灌漑施設整備に関する項目が目立つ結果が得られた.河川については洪水の記録が最も多く,被災状況にも触れられていた.さらに,紀州藩内に長大な用水路を開削した大畑才蔵の記述が突出して多く,江戸へ召し出された井澤弥惣兵衛為永に関する記述はごく僅かにとどまっていたことも示した.
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