現在, 化学においても生物学においても, そこで起こるいろいろな現象を原子・分子の性質に基づいて理解することに努力が払われる。そのためにはその現象をまずこのミクロの世界の問題にひき直して考えることになるが, 人々が体験するのはマクロの世界であるから, この両世界で現象がどのように関り合っているのかを理解するには, それぞれの分野ごとに, また研究者ごとにいろいろな経験が必要であり, 時間が必要である。もっと身近にミクロの世界を直接見聞の対象とするためには, この世界が一層, 具体的に人々の感覚にのるようにしたいものである。百聞は一見に如(し)かずというが, それにはまず手始めに, 機能している分子の大きさや形を知り, 構造を知ることから始まるのではないだろうか。本稿では, その手段を考え, さらに一歩をすすめて, 形だけでなく分子構造そのものを研究する手段としての回折法について現状を紹介したい。
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