近世期では、幕府の出版統制時に既存の作を焼き直して急場を凌ぐことがある。寛政改革時に山東京伝が作った善玉悪玉の黄表紙のうち最も教訓的と言われる『堪忍袋緒〆善玉』と、天保改革時に弟の京山が作った合巻『忠孝早染草』を比較、約半世紀の間におこった戯作の変化を考察した。教育的内容を内包することが求められた天保改革時の過剰な自粛が、褌姿の善玉悪玉に衣装を着せた。また天保期以前の常識を覆す文芸の諸相を指摘、天保改革を機とする教育観の変化を確認した。
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