本研究では、
コミュニティバス
のいくつか事例の導入プロセスから、自治体間の波及におけるバラエティと要因を考察した。
コミュニティバス
は、一元的だった運輸政策を背景としながらも、オーダーメイドで検討・協議を重ねていった武蔵野市ムーバスの成功によって、新たな交通システムとして全国的に認知され現在もなお広がっている。 自治体間の波及においては、横並び意識を背景とした政治的な要因も導入のきっかけとなる。中でも近隣自治体を中心に波及しやすいという傾向が見られ、その理由として、認知度が高く住民や議員による要望が起こりやすいこと、行政が近隣自治体の事例を中心に参照する傾向があることの2点が挙げられる。しかし具体的な検討過程では、大部分の事例が地域環境の差異を認識したオーダーメイドによる検討を志しており、行政による他自治体への相互参照の内容は「検討のノウハウ」が中心になっている。また近年では、道路運送法の改正による規制緩和を背景に事業者との関係にも変化が見られる。特に自治体は調査・企画で方向性を示しつつも運行補助はなく、沿道の環境整備といった間接的な支援に特化する事例が増える傾向にある。 このように
コミュニティバス
の波及は、地域の問題を自律的に解決していこうとした自治体によってなされ、その取り組みの蓄積は規制緩和と連動して、民間バス事業者との役割分担にも新たな枠組みをもたらしたと言える。今後は地域交通を取り巻く環境がより厳しさを増していく中で、自治体はいかに「自らの地域の交通網のあるべき姿」を描き出し、その実現を事業者との協力体制の中で、主導していけるかが求められるだろう。
コミュニティバス
の導入もそのための手段として位置づけていく必要があると考える。
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