風光明媚が知られる関門海峡地域は, 古代より東アジアを含めた日本の地域間交通の要所であり, 歴史的には様々な観点からの風景の意味付けが存在している。しかし.近代以降は, 土木技術の発展により海峡をまたぐインフラストラクチュアが集中し, 景観の著しい変化がもたらされた。
本研究では, この地域の景観体験の質の変遷について, 歴史的に評価された風景と, 近代以降に出現した風景に対する価値付けの意識を比較考察した。その結果, インフラストラクチュアの整備過程では,「風景の体験認識, 編集」という風景生成の条件に固有の特徴があったことが明らかにされ, 近年展開している景観整備事業において重視されている風景に対する価値付けの意識が, 近世以前のものと共通性を帯びていることが確認された。
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