要旨: 高齢期人工内耳装用の効果については, これまで医療機関内での効果測定が用いられ, 日常生活での満足度や社会的活動等と関連づけた検討は乏しい。我々は, 高齢期人工内耳装用者の術後聴取能と生活上の満足度, 社会的活動の改善を明らかにするために実態調査を行ったので報告する。全国の人工内耳手術施設に通院する65歳以上の高齢装用者および当事者団体の装用者を対象に, 質問紙調査を実施した。結果, 75名より回答を得た。術後の聴取改善としては, 担当言語聴覚士や家族との日常会話など, 身近な者との会話は 8 割以上が改善したと指摘された。また, 人工内耳装用後に生活満足度の健康観や人生満足等の項目で, 約半数が改善した。社会的活動においては, 個人的な活動が増加し, 社会参加・奉仕活動と学習活動で変化は乏しかった。高齢難聴者への人工内耳装用は, 1 対 1 の対面を中心とした会話を補償し, 個人による社会的活動や生活上の満足度を向上させた。
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