本稿の目的は、1916(大正5)年6月から1917(大正6)年1月にかけて出版された『幼年百譚 お話の庫』に収録されているグリム童話26話について、改変の有無や改変の傾向を分析し、考察することである。これまで『幼年百譚 お話の庫』には15話のグリム童話が収録されていることが判明していたが、調査の結果、新たに11話がグリム童話であると判明し、合計26話のグリム童話が収録されていることが明らかになった。邦訳はいずれも、話の筋はグリム童話にほぼ忠実であるが、人名が日本人の名前に変えられたり、物の名称が日本人にとって親しみやすいものに置き換えられていたり、結末が子どもの教育にとってよりふさわしいものになるよう改変されていたりする。
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