本研究では平成28年熊本地震における公共土木被害の災害査定業務を事例に,被害情報の収集・集約・管理における情報システムの活用について考察した.熊本地震発生後から行われた公共土木被害の情報収集・集約・管理については,パトロールメンバーが収集した情報を熊本県各振興局が集約し,各振興局が集約した情報を県庁に報告する業務フローが行われていた.この際,当初は紙や写真等による報告が行われており,上位組織が取りまとめる際に再度情報の入力・整理を行う必要が生じていた.そこで,Web-GISを基盤とした情報システムを用いた情報収集・集約・管理を行うことで,パトロールメンバーが収集した情報を一元的に集約・管理することを可能にし,振興局や県庁では集約された情報の利活用が容易になるようにした.県職員へのインタビューからは,情報システムを利用することで被害情報の入力・整理等にかかる負荷が軽減されたことや,情報管理を適切に行うことで外部組織への対応などを効率的に行うことができる可能性が指摘された.一方で,利用者に応じた閲覧・編集等の利用権限設定の問題や,実際の災害査定業務との関わりを意識した活用イメージ,業務に必要となる情報の属性,その他システムとの連動,外部からの情報支援体制が課題として明らかになり,これらは情報システム導入・活用の必要条件になると考えられる.
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