近年石川県の千里浜では,年間に約1mもの速度で砂浜が後退しており,貴重な観光レクリエーションの場が急速に失われつつある.さらに近い将来には,気候変動に伴う海面上昇による砂浜のさらなる消失が危惧される.そこで本研究では,より新しい砂浜レクリエーション交通データを取得し,砂浜面積以外にも気象という新たな環境質変数を考慮することで,既往研究における温暖化被害の将来推計の精緻化を図る.この時,気象や海面上昇の変化によって被害へ与える寄与率も導出する.主だった対象地域は,新潟県・石川県の沿岸地域における砂浜とする.また,気象の将来予測にはGCM・MIROCにおけるRCP2.6とRCP8.5のシナリオを用いる.分析の結果,寄与率の算定により,主だった被害の内訳は海面上昇と砂浜侵食によるものであり,気温の上昇は訪問者の選好を通して直接的に被害を軽減する.一方で,海面上昇を通して間接的に被害の増加にも働くことが示唆された.
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