結晶の成長形を決定するのは成長速度の異方性である。石英の場合は,柱面(
m:{10.0})や錐面(
r:{10.1},
z:{01.1})の垂線成長速度に比べて,底面(
c:{00.1})の垂線成長速度が速いため,天然に産する水晶の形状は,主に柱面と錐面とで囲まれた形状となり,底面が出現することは極めて稀である。例外的に、限られた産地から底面をもつ水晶の産出が知られているが、カソードルミネッセンス(CL)観察により、溶解によって底面が生じたことが示されている(Kawasaki et al, 2006)。 本研究では、ヒマラヤ産の
アイスクリスタル
と呼ばれる蝕像水晶や昨年度に引き続き大阪府長谷産の高温石英のCL観察を行なった。その結果、長谷産の高温石英では、溶解ではなく成長の過程で底面が出現している組織が確認され、成長速度も錐面よりも底面の方が遅い成長ステージがあったことが判明した。
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