外来植物は、瞬く間に分布域を広げ在来植物を駆逐する場合がある一方で、定着してから気づいたら姿を消していたという場合もある。こうした外来植物の在来生態系でのふるまいの違いを理解・予測する上で、外来植物の自身の形質に加えて、外来植物と在来植物の間の相互作用のメカニズムの理解が欠かせない。本稿では、外来植物が植食者を介して在来植物に与える負の影響(見かけの競争)に注目し、これまで研究されてきた事例を幅広く紹介し、後半ではこの3者間の相互作用が環境要因によってどのように変化しうるかについて議論する。さらに見かけの競争によって、意図的・非意図的な外来植食者の侵入が逆に在来植物の食害を増加させる事例についてまとめた。また、筆者が外来植物のセイタカアワダチソウを材料に、原産地と侵入地で見かけの競争の地理的な変異に注目して行っている事例研究を少し紹介する。最後に、外来植物を取り巻く環境の変化を取り上げて、変動する環境下において、変化していく外来植物のふるまいへの理解を深める今後の研究の展望を探りたい。
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