中世後期北・中部イタリアの都市コムーネにおける都市=農村関係は、一般的に領域国家の成立に向けた秩序形成という視点からとらえられることが多く、結果として「都市中心的」な理解につながりがちである。これに対して、近年は農村の多様性や経済的活力に着目した見直しも行われるようになってきているが、まだ充分とは言えない。本稿では、近代以降の都市と農村の対比から生み出される都市中心的思考から脱し、13〜14世紀における農村、及び都市=農村関係の実態を、この時代に固有のものとしてとらえなおすことを長期的な課題とし、そのためには、何が問題となっているのかを確認する。また同時に、都市と農村の双方向的な秩序形成の理解を目指し、研究動向を整理する。
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