本研究では,拡大しているペットフード市場を牽引しているキャットフード業界に農業経済学分野で初めて焦点を当てた。本稿は,2015年に海外の主要生産国タイから国内へ生産拠点を完全にシフトさせた先駆的な企業行動を取り上げ,その原因を市場構造の観点から考察した。また,その企業行動の評価についても市場調査を通して入手したデータを基に分析を行った。その結果,2010年から業界で深刻化した構造変化に伴って,事例企業はそれに対応できなかったことが原因にあった。しかし,国内回帰し連携先企業の協力を得ることで,大手企業の製品が多く存在する中心価格帯や,やや高価格帯で独自性ある製品の供給が可能となった。こうした戦略の転換によって,事例企業は大幅な赤字からの脱却が可能となった。それゆえ,この企業行動は近年の市場構造の変化に適切に対応したものと理解される。
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