関東北部の集約畜産地帯とその周辺において窒素の湿性沈着量を調べるために常時開放型採取器によるサンプル(バルクサンプル)と降雨時開放型サンプル(
ウエットサンプ
ル)を25月間観測した.バルクサンプルの全窒素およびアンモニア態窒素濃度は畜産地帯中央部で高く,15km離れた遠隔山間部で低濃度であり,夏から秋の低濃度期間と冬から春の高濃度期間が認められた.年間の積算沈着量は畜産地帯中央部と遠隔部で大きな差が認められ,国内既報値や欧州の観測事例に比べても非常に大きい値であった.全降雨イベントの約4割を対象とした降雨量分割サンプルの窒素濃度は降雨直後に非常に高濃度であり,8mmまでに大きく濃度が低下する傾向がみられた.畜産地帯中央部において降雨開始直後のサンプルが高濃度であり,遠隔部ではこれに比べると低かった.バルクサンプル,
ウエットサンプ
ルともにみられた地点間差の主要因として畜産農家のふん尿に起因するアンモニア揮散が推測された.季節変動の要因としては降雨量の他に畜産農家のふん尿処理利用の管理作業の影響が考えられた.上記のように,集約的畜産地帯においては窒素沈着量が大きく増大する問題点が明らかにされた.
抄録全体を表示