教育思想史において、17世紀の哲学者デカルトは特異な位置を占めている。18世紀に入って本格的に展開する近代教育思想は、経験論をベースに教育の方法原理を開発していき、教育の可能性を広げていったが、デカルトにはじまる合理論はそれにたいしてどのような関わりをしてきたのか。本稿では、経験論と合理論の'結合'がコメニウスの教育思想にみられるとする相馬氏の解釈に、哲学史の定説のがわから検討をくわえていく。そのうえで、経験論の申し子ともいうべき学習心理学の「学習」にたいする、デカルトの合理論の系譜を引くチョムスキーの批判をとりあげ、思想史的には、経験論と合理論とは'結合'の視点よりも、'対照'の視点からみていくことが重要であることを論じていく。あわせて、学習論の思想史(という構想が成り立つとすれば、それ)の課題は何かを示していく。
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