近年,高病原性鳥インフルエンザウイルスが野鳥と家禽の双方から検出される事例が増加している。重篤な感染症の発生が報告されるなかで,国内の動物園・水族館では,世界各地の多種多様な鳥類が数多く飼育されており,その中にはIUCNのレッドリストやCITESの附属書などに掲載されているような希少種が多く含まれているため,飼育下の鳥類に対する対策の確立も急務となっている。飼育下の野生動物は,飼育環境や個体管理方法などの点で家畜や家禽,犬猫などと全く同じ条件では扱うことができないため,感染症対策においても異なった判断が求められることがある。感染症対策の選択肢となるワクチンは,経済動物などに対して使用が規制されているものもあるが,対象となる種やその飼育方針を考慮しつつ慎重に適用することで,飼育下の野生動物に対する有効な対策の1つとなると考えられる。
抄録全体を表示