本稿では、第一に、現代の情報化社会で言説がいかに生成されるか、その過程を
オウム真理教
事件に関わる言説に則して見ていぎ、現在流通している様々な言説を共通の概念枠組みで記述した。第二に、
オウム真理教
がなぜかくも急速に信者を獲得・動員して犯罪を行い得たのかという疑問への説明として最も流布し、しかも社会的影響力を持ったマインド・コントロール論を取り上げ、
オウム真理教
現象の構成のされ方、論者の視点の問題点を社会学的に吟味した。
マインド・コントロールの一般的定義は、(一)破壊的カルト教団による信者の利用、(二)社会心理学的技術の応用、(三)他律的行動支配、の三つの部分から構成されている。(二)は宗教上の入信行為の説明として不十分であること、(三)は社会的行為において論理的な命題を構成できないこと、(一)こそマインド・コントロールの核心であったが、これは価値中立的な認識ではないこと、信教の自由という問題に抵触すること、結局の所、人間の宗教的行為、宗教集団の多面性を理解する上で力がないことを明らかにした。
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