日本における生物多様性保全施策の概要について主に昆虫類の保全の観点から取りまとめた.法律の整備について文化財保護法による天然記念物行政,自然公園法による国立公園等の管理,種の保存法による希少野生動植物の保護,外来生物法による外来生物対策について歴史的背景と現状や課題について概観した.また,国の施策としてのレッドデータブック,自然環境保全基礎調査,生物多様性国家戦略について解説を行った.生物多様性保全の施策を推進するには,正しい現状認識や科学的データの裏付けが欠かせないが,基礎的な情報の収集と蓄積について,昆虫研究者が果たすべき役割が大きいことを指摘した.
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