スーパーカミオカンデによる大気ニュートリノの観測から, 既にν
μ→ντのニュートリノ振動が確立している.さらに, 最近発表されたカナダの太陽ニュートリノ実験SNO(Sudbury Neutrino Observatory)の結果とスーパーカミオカンデの太陽ニュートリノ観測結果を併せると, 長年の問題であった太陽ニュートリノの不足が, ニュートリノ振動によるものであることがはっきりした.大気ニュートリノと太陽ニュートリノの観測, および原子炉を用いたニュートリノ振動実験CHOOZの結果から, ニュートリノの混合行列(MNS行列;牧・中川・坂田行列)についてかなりのことが分かってきた.MNS行列はクォークの混合行列(CKM行列;
カビボ
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小林
・
益川行列
)とは非常に異なり, 世代の構造を含むレプトンとクォークの統一的理解への鍵となると考えられる.その全体像を解明することが, 今後のニュートリノ振動実験の主な課題である.このような立場からニュートリノ振動実験の現状と将来を概観する.
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