小島嶼開発途上国では,エネルギーや水資源の安定供給の面での課題,観光開発に伴う海洋資源への影響や,耕作放棄の増加,食料自給率の低下などの食料の安全保障に関する懸念,沿岸域の気候変動に対する脆弱性など,きわめて複雑で幅広い問題を抱えている。しかしこれまでの技術支援や研究取組みを俯瞰してみると,農業農村工学が太平洋島嶼国でのSDGs達成に貢献できる分野は多岐にわたるといえる。本報ではパラオ共和国を対象に,現在進行中の資源循環型社会へ向けた取組みや,食やエネルギーの安全保障,農業農村の活性化へ向けた構想について紹介する。さらに,著者らが持続可能な開発や農村再生を目指して取り組んできた研究調査内容について概説し,今後農業農村工学分野が解決すべき課題について述べる。
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